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執筆者の写真alt-alc,ltd.

モクテル作りの基本概念

更新日:2021年2月20日





ノンアルコールカクテルを意味するモクテルも徐々に浸透してきたのではないだろうか?


しかし名前や存在こそ知っていても、ではどうやって作っていくかはまた別の問題である。

今回はモクテルを作っていく上での考え方について簡単にまとめてみたい。


モクテルを考える上での入り口は大きく二つに分けられる。


  • 伝統派アルコールを念頭に置いたモクテル作り

  • イノベーティブ派料理や素材を念頭においたモクテル作り


伝統派

伝統派はさらに、カクテルのレシピに基づいてモクテル作りを成す手法と元になるアルコールの味わいに基づいてモクテル作りを成す手法の二つが存在する。


  • レシピベース手法


わかりやすくジントニックを例にとってみると、ジントニックはジンとトニックウォーターからなっている。これをモクテルで再現するとしたら、ジンの代わりにノンアルコールジンを用いて、トニックウォーターで割るということになる。


このように既存のレシピの中のアルコール部分を、ノンアルコールにツイストすることでモクテル作りを行う手法。


  • 味わいベース手法


今度は、ネグローニを例にとってみよう。


ネグローニはジン×カンパリ×スイートベルモットから成る。このような多くの種類のアルコールをもとにしたカクテルをモクテルにする場合、レシピベース手法は取りづらい。


そういう場合は、味わいという観点からカクテルを要素分解することでモクテル作りを見ていくことも効果的だ。


ネグローニの味わいの要素は、カンパリ由来のビターオレンジやルートの苦みとベルモット由来の甘さをノンアルコールで表現することでモクテル作りを行う手法。


カクテルだけでなく、ワインに対しても適応できる手法である。


例えば、赤いベリーのビビッドな果実味、グルタミン酸系の旨み、綺麗な酸味を持つニュージランド産のピノノワールをノンアルコールカクテルで表現する際に、クランベリーやキノコなど用いてアプローチするのもこの手法になる。


イノベーティブ派

イノベーティブ派にも二つの手法が存在する。


  • 素材ベース手法


素材ベースの手法は、これまで主にフルーツカクテルなどに適応された方法である。

その時期の旬のフルーツや食材をベースにモクテルを作っていく手法。


  • ペアリングベース手法


料理との相性から使う食材・味わい・方向性を考えていくモクテル作りの手法。


ペアリングについての細かい考え方は『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』を参照にしていただけたらと思うが、いくつか抜粋する。


料理の味わい要素にペアリングしていく考え方。


  • 脂質:酸味や炭酸、タンニンが油分をカットしてくれ、アルコール由来のふくよかさによって全体の調和を取ってくれる。アルコールは油分と混ざり合うために合わせやすい。一方、ノンアルコールの場合はそれができないため、酸味による唾液分泌促進、炭酸の泡効果、タンニンによるタンパク質との結合作用を活用する必要がある。

  • 酸味:酸味のある料理には、酸味のある飲料を合わせる。少なくとも料理と同程度の酸味を持つ飲料を合わせないと、飲料の味わいがぼやけてしまう。酸味がない場合は、炭酸を持つ飲料でも近い効果が期待できる。

  • 塩味:塩味は果実味を抑え、アルコールの苦みを引き立たせる。甘さとの相性はよい。その他に、炭酸は塩味と調和し、余分な塩味を洗い流してくれる。

  • 甘み:アルコールの場合は、料理の甘みより強い甘みのものを合わせる必要がある。飲料の甘みが負けてしまうと、苦みや酸味が引き立ってしまう。また高いアルコール度数のものは、甘さを感じさせるため、料理の甘みとも相性が良い。一方、ノンアルコールの場合は、料理と飲料の甘みはしばしば打ち消しあう。そのため、ノンアルコールの場合は、甘さでなくフレーバー等で合わせに行く必要がある。

  • 苦み:料理の苦みと飲料の苦みはそれぞれ打ち消しあうことなく、相乗効果となる。苦みもカカオのようなものの持つ苦みの場合は、赤いベリー系の果実味などと相性がよく、魚介類の内臓のような苦みは炭酸で和らぎ、うまみと調和する。つまり苦みの場合は、それ以外の要素で判断する必要があるといえる。

  • テクスチャ:一般的な原則として、料理と飲料の重さ・強さは合わせなくてはならない。重めの料理にはボディのしっかりした飲料を、軽めの料理には軽快な飲み口の飲料をあてがう必要がある。


料理の素材にペアリングしていく考え方。



 

もちろん、実際の現場では伝統派とイノベーティブ派の双方を取り入れた考え方が最も一般的に取られることになるのだろう。


今後それぞれの手法についてより詳細に言及する機会をもうけれればと思う。


■第一線で活躍するバーテンダーが教えるモクテルの造り方はこちらから■


参考サイト

"How to Make Balanced Non-Alcoholic Cocktails, According to Bartenders" WINE ENTHUSIAST

"Try the Non-Alcoholic Pairings at Fauna" D-magazine

"Non-alcoholic pairings are taking off in Singapore restaurants" PRESTIGE

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