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執筆者の写真alt-alc,ltd.

ノンアルコールワインの製造方法

更新日:2021年5月31日






ノンアルコール~とは、結構ややこしいものが多い。

実際ジュースと何が違うのか?どうやって作っているのか?


今回は、ノンアルコールワインの製造方法について紐解いていく。


ノンアルコール化の三つのタイミングと四つの基本方針

ノンアルコールワインを造る方法には、想像以上に様々な方法、工程がある。


しかし、ノンアルコール化の為の介入のタイミングは、発酵前、発酵中、発酵後の三つに絞られる。


ノンアルコール化の基本方針は、大きく四つにある。


  • 発酵性糖の低減(発酵前)

  • アルコール生成量の低減(発酵中)

  • 浸透膜透過による成分分離(発酵後)

  • 浸透膜を使わない成分分離(発酵後)


それぞれの基本方針のもと、九つのノンアルコール化技術を見ていく。


発酵性糖の低減 @発酵前

アルコール発酵には原料となる糖分が必要になる。

その糖分を減らしておくことで、アルコール発酵を阻害するという方法である。


これは、さらに三つの技術が存在する。


  • 果実の早摘み

  • 果汁希釈

  • グルコース酸化酵素(GOX)の使用


►果実の早摘み


果実が成熟する前に収獲してしまうことで、果実の糖度を抑える手法である。


高い酸度を維持できる一方、成熟とともに作られていく果実の香気成分や酵母由来の香気成分が欠けているというデメリットも存在する。


わずかな糖をもとに発酵させるため、アルコールの生成は抑えられる。


►果汁希釈


糖度の低い果汁で希釈してアルコール度数を調整する手法である。


後に見ていく、逆浸透膜法や熱蒸留などと併用して使われることが多い。


►グルコース酸化酵素(GOX)の使用


発酵前のブドウ果汁にグルコース酸化酵素を加えることで、果汁中のグルコース(発酵性糖)をグルコン酸に変容させる手法である。


これにより、アルコール発酵に必要な糖分を減少させ、その上で発酵を行う。


この場合のノンアルコールワインの製造工程は下記のようになる。


果汁

濾過・清澄

エアレーション・攪拌

グルコース酸化酵素の投入

↑↓

グルコース、グルコン酸量のモニター

発酵・乳酸発酵

安定化・濾過・ブレンド・酸度調整

パッケージング


アルコール生成量の低減 @発酵中

発酵の際に生まれる、アルコール量を減らしてノンアルコール化していく方法。

大きく二つの方法が存在する。


  • 酵母株の改良

  • 発酵の途中停止


►酵母株の改良


通常ワインやビールの酵母には、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)が用いられる。

これは発酵の安定性、そして予測のしやすさというものを重視しているためである。


ノンアルコール化させるために使われる酵母株には、pichia属酵母やWilliopsis 属酵母などが存在する。


上記二つの酵母株は、出芽酵母から生成されるワインやビール等と比較しても、味わいなどの品質を保ちながら、アルコールを抑えた発酵が可能となる。


►発酵の途中停止


これは、アルコールが多量に生成される前に途中で発酵を止めてしまう方法である。


この場合、発酵性糖が多分に残るため加熱殺菌が必要となり、その過程で香気成分などを減じる恐れがある。


浸透膜透過による成分分離 @発酵後

浸透膜を使って、ワインの成分を分離することで、アルコール度数を調整する。

古くはカリフォルニアのワインの製造においても、使われていた方法である。大きく二つの方法がある。


  • 逆浸透膜法

  • 浸透気化法


►逆浸透膜法


特定の物質のみを透過させる半透膜を用いることでアルコールとその他の成分を分離させる。


極微小の穴の開いたフィルターにワインを浸し、一定の圧力をかけることで、穴のサイズ以下の分子と穴のサイズよりも大きい分子に分別する。


具体的な順序としては下記の通りである(下図参照)


ワイン槽に加圧し半透膜に透過させる(1→2)

透過したものとそれ以外で分離(2)

透過したものは、水とともに熱蒸留にかける(3→5)

不透過のものは、ワイン槽に戻す(4)

熱蒸留にかけ、一部はワイン槽に戻す(5→6)

アルコールは集積する(5→7)

上記工程を10~20回繰り返し、濃縮脱アルコールワイン液を作り、加水する



►浸透気化法


浸透気化法は、不溶性の浸透膜を隔てて、片側にワインを入れ、もう一方の側を減圧させ、特定の成分を気化させ抽出するノンアルコール化の手法である。


下図では、真ん中を不溶性の膜が隔てており、下部にワインを流し込む。上部は真空ポンプ等を使って、減圧させ減圧下での気化温度の違いを利用して、アルコールを分離している。


逆浸透膜法と比較すると、同量のアルコールを分離のにより長い時間を必要とする。一方で、必要とされるエネルギーが少量で済むことや、比較的製品に与える悪影響が少ないなどのメリットを持つ。



浸透膜を使わない成分分離 @発酵後

浸透膜を使わずに、ワインの成分を分離することで、アルコール度数を調整する。


  • スピニングコーンカラム(SCC)

  • 低温蒸留法・溶媒抽出法


►スピニングコーンカラム(SCC)


スピニングコーンカラムとは、下図のようなノンアルコール化装置である。

ワインから揮発性成分を抽出する働きをもつ。


SCC内部は減圧状態にあり、そのため液体の沸点は通常の100度から30度前後まで下がっている。そのうえで中心部の軸が回り、軸から伸びるコーンの回転で遠心力を発生させている。


遠心力で薄く延ばされたワインは、内部の温度により蒸発し、下部から送り込まれる窒素などのガスにより揮発した成分が吸収され、集められる仕組みとなっている。



►低温蒸留法・溶媒抽出法


低温蒸留法と溶媒抽出法は合わせて使われることの多いノンアルコール化の手段である。


減圧下で低温で揮発成分を蒸発させることで、アルコールや香気成分の飛んだワインとアルコールと香気成分を分離させ、溶媒抽出法を用いてアルコールと香気成分から香気成分をさらに取り出すという流れを取る。


蒸留により抽出されたアルコールと香気成分の混合気体は、溶媒抽出法(超臨界抽出法)により香気成分のみを取り出す。


これには、まず二酸化炭素を抽出した混合気体に加え圧力を加えることで、液体と気体の中間にあたる超臨界流体を作り、圧力を下げていくことで、香気成分のみを取り出すというプロセスを取る。


最終的に、アルコールや香気成分の飛んだワインと抽出した香気成分を加えることで、ノンアルコールワインを作り出す。


▶関連記事を読む

『ノンアルコールビールの製造方法』 https://bit.ly/2A4EUwi

『ノンアルコールスピリッツの蒸留』 https://bit.ly/3eaQLHQ


参照サイト

"Production Technologies for Reduced Alcoholic Wines" Journal of Food Science 2012

『公表特許公報(A)_アルコール含量が減少したアルコール飲料の製造のための方法』

『公表特許公報(A)_ピキア属酵母と様々なホップ品種群の組み合わせによるビールの風味向上』

『超臨界抽出の特徴』株式会社超臨界技術研究所

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