前回は、ノンアルコール、アルコールを問わず抽出のいくつかの方法を見てきた。
今回はノンアルコールに絞って、昨今欧米で話題になっているノンアルコールスピリッツなるものがどのような蒸留方法をとっているかを見ていきたい。
ノンアルコールスピリッツには大きく二つの製法がある。
一つが、ニュートラルスピリッツを用いた脱アルコールする方法である。もう一つは、製造過程でアルコールを用いることなく造る方法である。
脱アルコールタイプ
ノンアルコール飲料の主流ともいえる、脱アルコール製法。
しかし、昨今の一大ムーブメントを作っているノンアルコールスピリッツだけあり、その製法は非常に手が込んでいる。
まずは、ボタニカルをニュートラルスピリッツに浸漬するところから始まる。
この際ボタニカルは種類ごとに個別に扱われ、使われるニュートラルスピリッツのベースとなる穀物もそれぞれに適したものが使われる。
浸漬の後は、ボタニカルは脱アルコールの為に一度蒸留される。この時、ボタニカルを浸した溶液のアルコール度数は低いため、完全にアルコールは飛ばされる。
その後、二度目で全ての種類のボタニカルが混ぜ合わせ蒸留にかけられ濃縮化される。
*この際に、ボタニカルを水などに浸け込み蒸留をかけているのか、バスケットを用いてボタニカルを水蒸気にくぐらせているかは今ところ不明である。
最後に、濾過、瓶詰、ラベリングという過程に入る。
つまり、脱アルコールタイプのノンアルコールスピリッツの製法は以下のようになる。
ボタニカルの選定
↓
それぞれのボタニカルを最も適したニュートラルスピリッツで浸漬
↓
ボタニカル毎に脱アルコールのための蒸留
↓
全ての種類のボタニカルを合わせて、濃縮のための蒸留
↓
濾過
↓
瓶詰・ラベリング
このような製法は、世界初のノンアルコールスピリッツを標榜するSEEDLIPやペルノリカールのCEDERなどに当てはまる。
*CEDERは全てのボタニカルに対して、ニュートラルスピリッツによる浸漬を行っているわけではない。
完全ノンアルコールタイプ
完全ノンアルコールタイプは、製造工程のどの段階でもアルコールが介在しない手法である。
この方法には、エッセンシャルオイルなどでも用いられる水蒸気蒸留法がとられる。
水蒸気蒸留法は、香気成分の減量となるボタニカルを蒸留釜に入れ、そこに水蒸気を送り込みます。これにより、熱せられたボタニカル内部の香気成分は融点差により水蒸気とともに分離していく。
水と香気成分が混ざった水蒸気を集め冷却すると、それぞれが液体に戻っていくが、香気成分の多くは水に溶けにくい性質を持っているため、エッセンシャルオイルと水は分離した状態で液状化する(多くのエッセンシャルオイルは水より軽いため水の上部にエッセンシャルオイルがたまるようになる)。
分離させた水の方にもいくらかの香気成分は残り、これが芳香蒸留水やハーブウォーターと呼ばれるものになる。
Herbie VirginやStryyk、Fluèreなどはこのようなプロセスを用いている。
このほかにも、ニュートラルスピリッツも蒸留装置も使わないような、名ばかりのノンアルコールスピリッツも登場しているようだが、ロンドンを中心とした欧米でのこのようなノンアルコールスピリッツバブルが後には、本当に高品質なもののみが残ることになるだろう。
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『縦にも横にも広がるノンアルコールスピリッツ』 https://bit.ly/2XxquNk
『割る・伸びる・薄まる』 https://bit.ly/2Tyw7tc
『蒸留ってなんだ?』 https://bit.ly/2Tzy4Ws
参照サイト
"Analysis: Is greater transparency needed in non-alcoholic ‘spirits’?" THE SPIRITS BUSINESS
"A Non-Alcoholic Spirit That Tastes Just Like a Craft Cocktail" FOOD52
『エッセンシャルオイル(精油)の基礎知識』Tea-treeの森
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