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執筆者の写真alt-alc,ltd.

ティーペアリングを考える

更新日:2021年2月20日




体系化されたお茶の世界

お茶の歴史は長く、しっかり体系化がなされている。


ワインの世界でよく見られるアロマホイールがお茶の世界にも存在するのは、そうした歴史があればこそだろう。


ワインとお茶それぞれのアロマホイールを比較してみる。ティーアロマホイール(下図左)は、International Tea Master Associationから、ワインアロマホイール(下図右)はU.C. Davisからの出典となる。




大きな区分でティーアロマホイールは10区分、ワインアロマホイールは12区分に分類されており、共通項は6区分。


ティーアロマホイール特有の区分として、Sweet(甘み)、Fire/Animal(燻香/獣香)、Marine(海洋性)、Mineral(ミネラル)が挙げられる。


しかし、中小区分まで確認すれば、SweetやFire/Animalは共通部分が見いだせる。つまり、アロマホイール上ではMarine、Mineralがお茶における特筆点といえるかもしれない(もっとも、Mineralはワインでもしばしば問題に挙げられ、Marineについても塩味、潮香という意味合いでは表現に使われるが)。


一方、Chemicalなどの要素はワインならではと言えるだろう。


ティーペアリングの舞台裏

そもそも、ファインダイニングにおけるお茶と料理のマリアージュという概念はいつ頃から誕生したのだろうか。


ティーソムリエという肩書きの登場は、1998年のニューヨーク、Wホテルともいわれているが、ティーペアリングとなるともう少し新しいのかもしれない。


もともとイギリスには、お茶とお菓子を楽しむアフタヌーンティーに対して、夕食を食べながらお茶を飲むハイティーという文化があったようではあるが、これは今日でいう、ファインダイニングにおけるティーペアリングとは少し趣旨が異なる。


"tea pairing"の検索数(*「除外された検索結果」を除く)

"tea pairing"という言葉の関心度をGoogle検索結果数からおってみると、上記のような表が出来上がる。


こうして見ると、今日の「ティーペアリング」が世界で一般的になったのはここ10年から15年くらいとみるのが妥当だろう。


ちなみに、上記の The International Tea Master Associacionの創設も2007年である。


では、なぜティーペアリングなるものが近年にわたって台頭してきたのだろうか?


理由は大きく二つある。


  1. これまで許されていたアルコールを飲みながらのビジネスランチに否定的な企業が増加してきた。ここ数年はオフィシャルに、そのようなランチを禁止する企業も出てきている。主に生産性の向上を目的とする。

  2. ムスリムとのビジネス機会が増えたことである。イスラム教徒とのビジネス機会増加に伴い、飲酒は敬遠される傾向にある。


もちろん、ミレニアム世代の飲酒離れなども一端ではあるだろうが、ことファインダイニングでの変化は上記のようなビジネスシーンでのアルコールの捉え方の変化が大きいようだ。


ティーペアリングの難しさ

ペアリングに使う飲料としてのお茶の難しさとはどこにあるのだろうか。


  1. ワインや他の飲料と比較して㏗が高い

  2. 非常に繊細な味わい


►1.ワインや他の飲料と比較して㏗が高い


一般的にお茶の㏗は6~7と言われており、㏗3~4のワインと比較しても酸性が弱い。

ペアリングにおいて、酸は重要な要素である。


前回の『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』でもふれたが、脂質を洗い流すWASH効果や酸のある料理とのペアリングに欠かせない要素となる。


WASH効果については、もちろん茶葉由来のタンニンにも期待できるが、タンニンはタンパク質と結びつく性質を持っており、料理のタンパク質以外にも口内のタンパク質とも結びつく。


そのため、タンニンは口内に残り、結果わたしたちが本来WASH効果で期待する作用を達成できないというジレンマが存在する(もちろん、タンパク質の多い料理においては、酸よりもタンニンのWASH効果の方が優れている)。


しかし、お茶も一枚岩ではない。様々なお茶が存在し、その種類や淹れ方でもお茶の㏗は変化していく。



上図を見てもらえばわかるように、一般的なお茶は弱酸性~アルカリ性を示すが、ハーブティー、フルーツティーなどは使われる素材の㏗が強く影響するためその限りではない。

*トルコの研究では、酸度はハーブティーよりもフルーツティーの方が高いと言われている


他に、抽出時間、希釈によっても㏗レベルは影響を受ける。

抽出時間を延ばせば抽出物の㏗に近づき、希釈を行えば中性に近づく。


もし、ワインのようにペアリングを構成していくのであれば、前菜などコース前半は、酸味のあるフルーツティーやハーブティーでそろえ、コース終盤にタンニンの豊富なお茶を合わせに行くということになるのだろうか。


►2.非常に繊細な味わい


これは誰もが感じた経験があるのではないだろうか?


綺麗な香りだけれど、飲むとなにか物足りなさを感じるといった、あの感覚である。


これを考えるには、二つの概念を知っておく必要がある。


  • Fullness(豊かさ):一口飲んだときに感じる、味わいの厚みや芳醇さ。アミノ酸、ペクチン、砂糖などが、影響を与える。*ペクチンはお茶の渋みを抑える働きをもつ

  • Strength(力強さ):味わいの強さ/弱さのこと。主に、抽出時間や茶葉の量が影響を与える。

 

ちなみに、茶葉抽出の際、染み出てくる順番としては、


揮発性の香り成分

抗酸化作用をもつポリフェノールやフラバノール、カフェイン

苦み成分となる、タンニンなどのポリフェノールやフラバノール

 

なので、香りは芳醇だけど余韻が物足りないという場合は、Fullnessはしっかりしているが、Strengthが弱いということになる。


また、お茶を淹れる温度も、抽出物に影響を及ぼす。高い温度程、茶葉から様々な要素を効率的に抽出させるのに適している。


ペアリングということを考えると、あまりに線が細すぎると、料理に負けてしまい、わざわざ合わせる意味がなくなってしまう。


茶種以外にも、茶葉の量、お湯の量、お湯の温度、蒸らし時間などを考え、ペアリングを作り上げる必要がある。


茶種別ペアリング一覧

お茶と食事の関係性については、2000年代初頭にFresh Cup Magazineにより具体的かつ細かにまとめられてる。一部抜粋してまとめたものが下記である。



俯瞰してみてみると、デザート(洋菓子)にダージリンのような一般的な定式以外にも、キノコ類とアッサム、チーズとダージリン、鶏料理とセイロン、魚介類と龍井茶などの可能性が見てとれる。


またティーペアリングの際の留意点として、


  • 料理とお茶のフレーバーの強さを合わせること

  • 脂質の多い料理は、お茶の酸味、苦味、タンニンを抑える効果がある

  • 食事の甘みとお茶の甘みは打ち消しあうので、甘い料理には柑橘のニュアンスやフレーバー付けのされていないお茶、スパイス感のあるものを合わせる

  • お茶の苦味は食事の苦味を増長する


を挙げている。



意外とティーペアリングのHow toに踏み込んだ日本語記事はまだまだ少ないが、これからノンアルコールペアリングに取り組む際、お茶への理解は不可欠に違いない。


■ノンアルコールペアリングのご紹介はこちら■


▶関連記事を読む

『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』 https://bit.ly/2YTZryh

『ジュースペアリングを考える』 https://bit.ly/2OXb9ob


参照サイト

Tea Meets Dinner The Whole Leaf Aug 11, 2014 Fresh Cup Magazine

Tea & Food Pairings 2001 Fresh Cup Magazine

International Tea Masters Association ITWA Aroma Wheel

Wine Aroma Wheel from UC Davis

"The Problem With Tea Sommeliers" American Specialty Tea Alliance

"'I'll have a cuppa with my main': how tea became the new wine in restaurants"

The Telegraph

"Acidity in Tea: pH Levels, Effects, and More" healthline

"Why Some Expensive Teas Come Out “Weak” Taste?" Teavivre

"IS TEA ACIDIC? FACTORS AFFECTING PH LEVEL IN TEA" HELLO TEA CUP

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