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国内アルコール離れを説明する四つの要因

更新日:2019年8月6日




飲酒離れの進んだ三つの年と経済状況

第一回で飲酒離れの実態を数字ベースで見てきた。

第二回では、その背景を見ていき、原因の一端を探っていく。


前回の酒レポートの酒類消費量変遷を見ると、飲酒量が大きく下がっている年として、平成9年(1997年)・平成15年(2003年)・平成20年(2008年)の三つを挙げることができる。まずはそれぞれの年がどんな年であったかを見ていく。


1997年は、今年の漢字に”倒”が選ばれるほど、大手企業・銀行の倒産が相次いだ年であり、世界的にもアジア通貨危機に見舞われた景気後退期にあたる。消費税増税(3%→5%)も実施された年でもある。


2003年は、イラク戦争が勃発し、中国ではSARSが蔓延した。一方、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が日本映画史の記録を塗り替え、北島康介が世界水泳選手権平泳ぎで世界記録を樹立した。


2008年は、何を差し置いても9月15日アメリカ大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を端に発するリーマンショックが印象的であろう。ちなみに同年11月にはバラク・オバマ氏が大統領に当選し、日本ではFacebookやTwitterの日本語版がリリースされた。



このように見ていくと、まず第一に経済不況は要因の一つとして確かであろう。

しかし、バブル崩壊期間(1991年~1992年)や戦後発に政府がデフレ認定を下した平成13年(2001年)に大きな減少が見られないことから、経済不況以外の要因についても検討すべきである。


飲酒への社会的認識の変化

まずは、飲酒の社会的な認識の変遷を考えていこう。

上図は、 警察庁交通局が出している飲酒運転による交通事故件数の推移である。

一方、飲酒運転による罰則が強化されたのは、2002年、2007年、2009年の三年である。

罰則強化後の2003年、2008年が大きく消費量を下げている年であることを考えると、因果関係があることに間違いはないだろう。


飲酒運転などの飲酒に端を発する事件の増加によりお酒に対する社会的認識、制度面における変容があったことが飲酒離れのもう一つの要因である。


文化的背景が飲酒に及ぼす影響

次は、文化的な背景について検討してみる。


飲酒離れについて語られるとき最も語られるトピックとして健康志向というワードが挙げられる。健康志向の高まり自体は、厚生労働省をはじめとした調査機関の資料から判断できる。


実際に、厚生労働省が2013年と1994年に行った「運動・スポーツを行う理由」についての調査では、1994年までは「楽しみ・気晴らしとして」と答えた人が最も多いのに対して、2013年では「健康・体力つくりのため」という回答が最も多くなっている。



また、メタボリックシンドロームを表す「メタボ」というワードがGoogleで最も検索されたのは2008年4月とやはり、上記の大きく酒類消費量を減らした年と一致する。

しかし、単に健康になりたいから飲酒量を減らすというのは早計かもしれない。



上記でも活用したGoogle Trendを使って「朝活」というキーワードを見てみると、2009年頃から伸びてきている。同様に「ヨガ」といったキーワードも同時期から伸び始めている。こういったことから考えると、単なる健康というよりは、よりライフスタイルとしての健康を希求しているようにも考えられる。


若年層の嗜好性の変化

最後は、嗜好の問題である。もっともこの問題は、上記にあげた三つの年よりもより昨今の傾向かもしれない。あくまで、個人的な見解なので簡潔に述べると、それまで酔うことを目的としてアルコールを摂取していた世代から、より味わいや質を求める世代へと変わってきたということである。若い世代の飲酒離れが顕著である一方、クラフトビールなど比較的高単価な市場を20、30代が下支えしていることが証左となっている。


▶前回・続きを読む

データでたどる国内アルコール離れの実態 https://bit.ly/2xPyyMG

アルコール離れの着地点とノンアルコールの課題 https://bit.ly/2xJPBjp

▶関連記事を読む

世界のノンアルコール市場動向 https://bit.ly/32c8WYo 参照サイト

『酒レポート平成30年3月』国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2018/pdf/000.pdf

警察庁交通局配布資料 飲酒運転事故関連統計資料

健康をめぐる状況と意識 - 厚生労働省

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