数字で見る飲酒離れ
まずは、飲酒離れの実態を数字をもとに見ていく。
左の図は昨年国税庁が発表した『酒レポート』からの抜粋である。これを見ると、一人あたり飲酒量は1992年をピークとして、2016年までにはおよそ20%以上落ち込んでいることがわかる。
ちなみに、1992年といえば91年のバブル崩壊から続く景気後退期の中間にあたり、国家公務員の週休二日制が採用されたのもこの年である。
内閣府の定めるバブル崩壊期間が1991年3月から1993年10月であるから、この景気後退期が飲酒量に大きな影響を与えていないように思える。
もう一つ見ておきたい情報として、「~離れ」の枕詞のように使われる若者の飲酒動向が挙げられる。既出の『酒レポート』では、年代別の飲酒習慣有無を調査している。ここで言う「飲酒習慣」とは、週に三日以上の飲酒を指す。
最も多いのは男性60代、女性50代である。60代男性の54.0%、50代女性の22.5%が週に少なくとも三日は飲酒をしている。最も少ない層は、男女とも20代であり、どちらも全体平均の三分の一程度の割合しか飲酒習慣はないようである。
以上、二つから飲酒離れの実態を数値的側面から確認することができた。
現在の飲酒動向、若年層の飲酒離れを鑑みるに、この傾向は先十数年から数十年は続くものと言えるのではないだろうか。
嗜好性の変化
消費量の減少はわかったところで、次は減少の内実を見ていく。
上図は、前述『酒レポート』より酒類別の消費量構成比率である。
顕著な点は
・「ビール」消費量比率の大幅減
・「その他の醸造酒等」「リキュール」消費量比率の増加
一点目は、多くの言及は必要ないだろう。比率でおよそ40%、先に見てきたように平成初期から20%以上全体の消費量が減っていることを勘案すれば、単純計算でも半減しているといっても過言ではない。
二点目については、新ジャンルやチューハイの伸長である。日本における缶チューハイの歴史というのは、1980年代当時大衆居酒屋でブーム化していたチューハイに目を付けた、宝酒造が1984年に「タカラCANチューハイ」を発売したことに端を発する。2000年代に入るとそれまで焼酎メーカー主体で成長してきたこのジャンルに大手ビールメーカーが参入するようになり、加速度的に市場は拡大していった。
味覚的な言及をすれば、ビール→チューハイという流れは、苦み/喉ごしから甘み/果実感への変容ともとれる。実際、チューハイに限って言っても草創期においては、柑橘系のドライな味わいが売り出されたが、その後より果実感のある甘い味わいが好まれるようになっていった。
もちろん、直近数年の高アルコール、レモンサワー需要拡大、クラフトビール人気も看過することはできない。しかし、今回のコラムの目的はあくまで飲酒離れの実態調査であるので、そこへの言及は別の機会に譲りたい。
次回は、このような消費動向の背景について論じてみたい。
▶続きを読む
飲酒離れとノンアルコール事情② https://bit.ly/2XQQTn2
飲酒離れとノンアルコール事情③ https://bit.ly/2xJPBjp
▶関連記事を読む
世界のノンアルコール市場動向 https://bit.ly/32c8WYo
参照サイト
『酒レポート平成30年3月』国税庁
『缶チューハイ誕生から 30 年海外へ飛び出て市場をつくる日』2013年5月 酒文化研究所
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