今回は、International Wine and Spirits Reportによる “Low- and No-Alcohol Report” をもとに世界各国のロー/ノンアルコール事情を見ていきたい。
現状では、まだまだロー/ノンアルコールの市場は大きいとは言えない。イギリスでは、ロー/ノンアルコールブランドのアルコール市場での市場シェアは1.3%程度で、アメリカではさらに小さく0.5%程度しかない。
しかし、ロー/ノンアルコール市場は前途洋々とのことだ。
下部表は、参照した記事で出ていた数値情報をまとめたものである。
*表中のワイン、スピリッツ、ビール、RTD(Ready to Drink)はそれぞれロー/ノンアルコール商材のそれぞれのジャンルを指す
二次資料のため、完全なデータではないが一応の比較はできるかと思う。
ちなみに、Myvoiceという調査会社のレポートによると日本のノンアルコールビール購入者(過去に一度でも購入したことのある人)の割合は30.23%(母数10941人)ということで、商材の使用を検討している潜在層まではわからないが、上部表との比較検討材料にしていただければと思う。
商材カテゴリー毎の見込年平均成長率は、示唆深いように思う。現在ノンアルコールスピリッツ市場において、他国より一歩も二歩も先んじているイギリスは、やはり高い成長率を示している。
ノンアルコールビール
全体的にロー/ノンアルコールビールの伸びは穏やかと予想されているのは、他と比べて比較的早い段階から着手されてきたからだろうか。
しかし一方で、世界最大ビールメーカーのアンハイザーブッシュは2025年までに自社ビールの20%をロー/ノンアルコールビールにしていくと発表しており、ブリュードッグなどの高品質ビールメーカーもノンアルコールビールに乗り出して、と非常に活発な市場であることも間違いないだろう。
ノンアルコールRTD
RTDの世界は、大手メーカーよりも中小規模メーカーの熾烈な争いが目立つ印象である。海外ではすでに文化として受け入れられた感のあるKOMUBUCHAをはじめ、シュラブやノンアルコールカクテルが市場のプレイヤーといえるだろう。
ノンアルコールワイン
個人的に先行きの見えないのは、ノンアルコールワインの世界である。大きな技術革新は今のところ起こっておらず、アメリカではナパなど高級ワイン産地等でも造られてはいるものの、製造工程上甘みが残ってしまうのが課題と思われる。
甘みを消し去ったものは過度に補酸されており、もはやブドウ由来である必要に疑問符がつく。しかし、アメリカの大手コンステレーションなども注力していくようなので、やはり注視しておくべきであろう。
ノンアルコールスピリッツ
一方で、ペルノリカールやディアジオといった大手酒類メーカーの投資先はノンアルコールスピリッツである。SEEDLIPは、その的確なマーケティングによってイギリスをはじめ、アメリカ、アジア圏でも高い評価を築き上げている。
バー文化の盛んな地域においては、ノンアルコールカクテルやモクテルの認知度は高く、それ伴い支払意欲も高くなることが推測できる。一方、日本においては、依然アルコールの有無は価格に大きく反映するように思われる。
決して安くない価格のノンアルコールスピリッツが日本市場に参入してきた際に、市場がどのような反応を示すかは、導入時のマーケティングに大きく左右されることだろう。
世界でも大きなうねりをみせるロー/ノンアルコール市場は今後どのような展開を見せるのだろうか。
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データでたどる国内アルコール離れの実態 https://bit.ly/2xPyyMG
国内のアルコール離れを説明する四つの要因 https://bit.ly/2XQQTn2
アルコール離れの着地点とノンアルコールの課題 https://bit.ly/2xJPBjp
参照サイト
"Low- And No-Alcohol Beverages Are A Growing Trend Worldwide, Says New Report" Forbes Feb 20, 2019
"Why Alcohol Companies Are Betting on Non-Alcoholic 'Booze'" TIME June 3, 2019
『ノンアルコールビールに関するアンケート調査(第8回)』MyVoice
https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=23401
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