昨今のノンアルコール業界の盛り上がりを印象付けるのが、スピリッツフリー・バーの登場ではなかろうか。
アメリカでは、ニューヨークをはじめ、オースティン、ポートランド、イギリスのロンドン、オーストラリアなどでもスピリッツフリー・バーが登場しており、着実に広がりをみせつつある。
お酒のないバーなんて自家撞着だと言うのは簡単だが、いかにしてこの矛盾を抱えたバーが浸透してきているかを探っていきたい。
幅広く開かれた大人の空間
様々なスピリッツフリー・バーの経営者のインタビュー記事を読んでいると、共通することがある。
それは、彼らがお酒を飲む飲まないにかかわらず、広く開かれたソーシャルな大人な空間を創り出そうとしていることである。決して、お酒を飲めない人たちのみの理想郷を創ろうとしているわけではない。
美味しいモクテルを一杯ひかっけて、その後にお酒を飲みに近場のバーに出かけてくれて一向に構わない、というスタンスだ。
RTDから趣向を凝らしたモクテルまで
価格は、だいたい一杯10ドル~13ドルでバーテンダーによるモクテルを提供し、10ドル以下の価格帯ではRTDのノンアルコールビールやフルーツジュースなどを提供している。
モクテルには、ビーツやハラペーニョなど、趣向を凝らした材料を採用し、ただのソフトドリンクやジュースと明確に異なるものを作り出している。
いかに、アルコールがないながらお酒っぽさを演出するかは、以前書いた『一歩目のモクテル』で触れているので、興味があればご確認いただければと思う。
ハイブリッド・バーの存在
完全なスピリッツフリー・バーの他に、ノンアルコールに注力しながらも、従来通りアルコールを提供するバーも存在する。
スピリッツフリー・バーからハイブリッド・バーへ転向した、あるバーでは総売上のうち25%がモクテルの売上が占めており、粗利益などを考慮するとノンアルコール飲料の存在は非常に大きいということだ。
スピリッツフリー・バーの利点と課題
スピリッツフリー・バーを経営する際のメリットとしては、
高い粗利率
日中でも喫茶店、カフェの代わりとして集客が見込める
酒販免許を必要としない
理論上、潜在的な顧客は通常のバーよりも多くなる
深夜までの営業の必要がない
といった点が挙げられる。
一方、実際の課題点としては、
普段バーに寄り付かない新規の顧客の集客
支払い相場の低いノンアルコールに高い価値を付加する必要
日中営業の場合は、カフェなどとの競合が必要
アルコールと比較して、少ない既存商材(材料)での勝負
通常のカクテルと比べて、圧倒的にノウハウが欠如
などが挙げられるだろうか。
とはいえ、集客や差別化といった課題は、どんな店舗運営にも付きまとう永遠の課題であるともいえる。
市場的にも追い風の昨今、一歩踏み出すパイオニアが日本に現れるのもそう遠くないだろう。
▶関連記事を読む
一歩目のモクテル: https://bit.ly/2GlnxHy
参照サイト
"How Do Nonalcoholic Bars Actually Work?" EATER
"The rise of the sober bar" BBC
"The Rise of Excellent Zero-Proof Concoctions: 5 of the Best Non-Alcoholic Drinks to Make Now" Forbes
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